社会復帰を果たしても、病気は治らない
半強制「引きこもり」生活の終了
約一か月、ステイホームしていました。
緊急事態宣言を受け、仕事が実質休業となったのでした。
去年の秋に再就職するまで。
約二年間、人生最悪の精神状態へと堕ちてしまい、精神病院と自宅引きこもりを繰り返す生活を送っていた私だったけれど、恐ろしいほどにサクッと社会復帰を果たしてしまった。
が、まさかこんな形で、引きこもり生活に戻されるとは。
順調に蝕まれた精神
私にとって自宅は「魔の巣」。
本当に怖かった。
日々、精神が蝕まれていくのが。
自宅で過ごす日々のなか、病状がじわじわと悪化していくのがわかり、色々なことが怖くてしょうがなかった。
いわゆる解離性障害とPTSDの症状が、じわじわと出てくる。
過去に苦しんだ症状が、再発していく。
そわそわするようになり、不眠症状もどんどん悪化。
できることなら、ずっと眠っていたかったけど、それも叶わない。
疲れないから熟睡できないし、ある一定の時間に必ず悪夢で目が醒めてしまうようにもなった。
かといって、逃げる場所も無い。
わかってはいたけど、病気は治ってなどいない。
ただ、避けて、逃げて、上手くやっていただけなんだと、改めて痛感した。
「闇落ち」への恐怖
自宅待機中は、「仕事に復帰できないような精神状態まで堕ちてしまったらどうしよう…」そればかりを考えていた。
そう、決して病気は治っていないのだ。
仕事は順調でも…
幻聴はあるし、軽いフラッシュバックに襲われることはある。
恐怖感で電車を途中で降りたり、夜道が怖くなって家族に迎えにきてもらったりもした。不眠だって治っていない。悪夢もたまに見ていた。
せっかく、だいぶ戻った体力も、落ちていく。
心身共に仕事に戻れるのかが、不安で仕方が無かった
自宅待機当初はひたすら休業が明けるのを待っていたのに、途中からは逆に仕事の再開が不安でしかなかった。
痛感した。
私は、本当に紙一重のところで上手くやっているだけだ。
堕ちる時は、きっと突然で一瞬なんだと。
そういえば、昔も、そうだった気がする。
怖くなった。
休業が明けて
緊急事態宣言が緩和されて、仕事は再開になっている。
なまりきった身体での仕事は、心身共に非常に疲れる。
なにより、不眠が酷くなり、睡眠が上手く取れないことが辛い。
会社に行くことで、症状はだいぶ緩和されたけれど、まだ残るものもある。
ここからは、私自身と病気との戦いで
トラウマに勝たなければならないのだけども、今回はちょっと時間がかかりそうだ。
新型コロナウイルス、こういう形で人を堕とすとは。
いい迷惑だね、うんざりするよ。
笑いの仮面を被る
(映画「JOKER」の感想は、そのうちに。)
アーサーがピエロのメイクをして、ジョーカーへと変身するように。
女は化粧をし、簡単に変身することができる。
化粧によって、スイッチが入る。
少なくとも、私は気分が切り替わる。
強い自分になりたいのか。
優しい自分になりたいのか。
目を、頬を、唇を。
なりたい顔を作ることで、束の間でも生まれ変われる。
言い方を変えれば、自分を偽ることができる。
便利だ。
そんな言い訳を胸に、ホリデー限定の化粧品を買いすぎてしまった。
躁ではない、違う何か。
シャネル、スック 、ボビィブラウン、クリニーク、ルナソル、クラランス、ナーズ。
顔がいくつあっても足りない。
私はどれだけの顔を作って生きていくつもりなのだろうと、溜まりに溜まった化粧品の山を見て、毎日苦笑いしてしまう。
Darlin' from hell
GRAPEVINEの曲に「Darlin' from hell」というものがある。
歌詞は、実在した詩人ヘルダーリンの思想や人生、残した作品をモチーフに書かれたものである。ヘルダーリンのことを知っていれば、曲を聴けばすぐにわかる。
わかってはいる。
それでも、私はこの曲を違うものに捉え、そして半ば縛られている。
「この身を臥せるわ」
ダーリン フロム ヘル。
「地獄からやってくる彼」が、私にはいる。
私の解離性障害が最初に爆発したのは、この「地獄からやってくる彼」が切欠だ。
彼が地獄に行ったことで、私の「まとまっていた人格」は大崩壊した。
この曲の歌詞は、私と「地獄からやってきた彼」のやりとりのようだ。
「虚空を突き刺す詩」
思い出の半分くらいは曖昧にでっちあげる
その後 あなたを塔に幽閉して
この身を臥せるわ
歌詞:http://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B35880
彼の死は、私にとってトリガーだ。
フラッシュバックのように思い出してしまうと、解離性障害が暴発する。
そのうちに解離性健忘を起こし、彼のことを部分的に忘れる。辻褄合わせの記憶が生まれる。そのうち、彼を忘れる。
私の記憶の塔に、彼を幽閉するのだ。
トリガーが引かれると、塔のドアが開き、彼が現れる。
沢山の、本当の記憶と共に。
「舞い上がってよ ダーリン」
彼と私の過去は似ていた。
彼も私も、過去(その時点では地続きの現実)から逃げるために、夢を活力にし、地元を離れた。
それにも関わらず。
彼は、過去の呪縛から逃れられずに自ら地獄へ落ちた。
結局のところ。
どれだけ足掻いたところで、過去の呪縛からは逃れられないのではないか。
どれだけ過去と決別したと思ったところで、結局は「恐怖」の触手が私を絡めとり呑み込んでしまうのではないか。
自分も、彼のように堕ちる運命なのではないか。
一生、過去から逃げられないのではないか。
恐ろしくなった。
絶望に近い何かを感じてしまった。
そこで、弾けてしまったのだ。
弾けたことに気付く前に、記憶を失い、気付けば遠くにいた。
「おわかれだったわ ダーリン」
解離性同一性障害から復活し、一度は夢を叶えたのは。
彼の残した勝手な遺言が、大きなブーストとなってしまった。
生き急ぐように、寝る間も惜しんで休みなく努力をした。
暫くして、夢が叶ったと確信したと同時に。
私はある意味、生きる目的を失った。
叶ってからが勝負だというのに、安定した結果が得られるようになったら、私は徐々に精神のバランスを失っていった。
結果として、二度もこの身を臥せようとした。
そして、能力を失ってしまった。
皮肉なものだ。
自ら抱いた夢で、自ら努力して掴み取った能力と成功なのに。
彼の死とは関係なく、結果的には、努力を続けて夢を叶えたはずなのに。
彼とも、過去とも、決別したと思っていたのに。
実のところ、何とも決別できずにおり、縛られていたなんて。
お別れなんて、できちゃいなかったんだ。
「舞い上がってよ ダーリン」
いま何故、彼のことを思い出したかと言えば。
近しい人が亡くなったからだ。
その人の死は、自死ではない。
本人の望まぬ突然死ではあるけれど、近しい人の死に直面し、彼のことを思い出してしまった。
訃報を聞き、眠り、目覚めた時。
私のiphoneは、GRAPEVINE「Darlin' from hell」を再生していた。
帰路の途中、転寝から目覚めたときも。葬儀から帰る際も。気付くと、この曲を再生している。
亡くなった当人よりも。
彼の記憶の断片が、ポロポロと落ちてくる。
幽閉したはずの彼が、顔を覗かせている。
「どこに舞い降りたのダーリン」
「いつかまた、会えそうな気はしていた」
初めて会った日だって、忘れてしまっていた。
でも今は、はっきりと思い出した。
光の中で響いた、あの天使みたいな詩も。
恐怖への特効薬、それは自信(という仮説)
就職をした
私はいま、フルタイムで週5日働いている。
急だが、就職したのだ。
夏に失踪した女が、秋に就職。
退院してすぐ、業界大手の「ホワイト」認定されている会社を自ら探し、応募した。
書類と面接での選考を、運良く通過した。
運良く、最初に応募した企業で働くことになった。
ありがたや。
私は精神障害者手帳を持っていないので、一般枠だ。
いけないことなのだろうが、会社には精神の持病の話はしていない。
身体の持病(重め)の話をし、それを了承して頂いたうえでの採用となった。
なぜ、いきなり就職したかといえば。
理由はただひとつ。
「自分の心身を救うため」だ。
「恐怖」とはなにか
薬もカウンセリングも、私のことは救えなかった。
そうなれば、自分を救うのは自分しかいない。
自らを救うものは何かを考えた結果、導き出された答えが「就職」だった。
就職し、家から離れる習慣を作る。
社会に出て能力を発揮し、他者から求められる人材となることで、自信を取り戻せるのではないか。
自信を取り戻せば、様々な恐怖にも打ち勝てるのではないか。
この夏の入院生活を経て、そう考えた。
今回の入院生活は、静養やリハビリ以上に大きな意味があった。
「解離性障害」と向き合い、自分自身について各方位から冷静に考察するような時間となった。
病室のベッドで、King Gnu「白日」を聴きながら、ずっと考えていた。
"年だけを重ねた その向こう側に 待ち受けるのは天国か地獄か"
"うんざりするよ”
恐怖に呑まれて、部屋から出られなくなる前に、自らを、救わなければならない。
自宅に戻り「圧」を感じた瞬間、そう考えた。
家に篭って見えない恐怖と闘い続け、精神病院への入退院を繰り返す。そんな不毛な人生は嫌なのだ。
時間だけは、ただひたすら流れている。
どうせ潰れるならば。
見える難題にぶち当たり、悩んで努力して敗れた末に潰れたいのだ。
社会生活で取り戻す「自信」
残念ながら、文章を書く仕事ではない。
他のキャリアやスキルを活かしての就職だけれど、文章を書くために蓄えたスキルは非常に役に立っている。
文章は書けないくせに。皮肉で不思議なものだ。
環境が人を作るという言葉は、事実。
身体が覚えるという言葉も、事実。
仕事を前にすると、様々な能力が自然と現れる。
想像以上に自然と能力が現れ、仕事をこなしていく。
日に日に、自信がついていくようで。
私は捨てたもんじゃない。結構やれるじゃないかと。
仕事をすることが、喜びとなっている。
体力的にきつい部分はあれど、充実感が勝る。
朝の支度と出勤途中は、緊張感に溢れているけれど。
帰り道には、安堵と希望と感謝に溢れている。
私の「光について」
「引きこもりからの就職」は大きな賭けだった。
だけれど、いまのところは勝っている。
幻視は消えた。
ネガティブな幻聴は消えた。
睡眠薬がなくても眠気が訪れるようになったし、体力もだいぶ戻った。
ああ、このまま。
長く、「普通」の社会人生活が送れますように。
ああ、このまま。
自然と嫌なことが、忘れられますように。
夏に消えた女の、小さな忘れ物
Why don't you come back to me
この夏、私は消えていた。
現在の居場所から去り、一時的に記憶のほとんどを失くしていた。
あれこれあって、精神病院に入院した。
知らない土地の、山の中にある精神病院。
じきに、記憶を取り戻した。
ほとんどの記憶を取り戻したと思う。
代償だろうか、数ヶ月悩んでいた身体が崩れるような現象は今のところ消失した。
去るものを追うな
嫌な記憶も、それなりに思い出している。
だけれど、とても嫌な記憶は、きっと忘れていると思う。
自分自身に「それ」を思い出させないために。
あるいは「病気とその原因」を自分や周囲へ理解させるために、少々の嫌な記憶が残してあるのかもしれない。わからない。
例えるならば、どす黒い大木を隠すために、黒い大小の木で構成された森を残している。そんなところだろうか。
医師は言った。失った記憶については考えるなと。
言われなくとも、考えたくなどない。
人間は忘れる生き物だ。
ただ私のような病気の人間は、忘れるということがとても下手なのだ。
これだけは言える。
人格が何人いるだとか、そんなことに興味はないし意義も感じない。
痛みや苦しみも、全てを「自分」で受け止めたい。
どうせ壊れるならば、受け止めたうえで壊れたい。
病院では無かった「幻聴」が、現在の居場所である実家に戻ってきて復活した。自分の声が響くようになった、随分久しぶりに聞く気がする。
自分の中に巣くう黒いものが、白い紙に墨汁を垂らしたように、じわりとシミを作り、じわりじわりと心に広がっている感覚がある。
それでも、私は自分でいたい。
もう嫌なのだ。
大切な物事まで忘れて、突然消え去るなんてことは。
今週のお題「夏を振り返る」
夢か現か、それが問題だ
リアルな夢を見る
最近、夢を見る場合は必ずリアルだ。
悪夢だけではなく、甘く優しい夢も見る。
実際に経験したことを追体験するような夢と、実体験ではないが登場人物や状況が実にリアルで、いかにもあり得そうな内容の夢。どちらかだ。
夢だと断定し「過去に無かった」と思いこんでいるものも、実際には経験した「過去」なのかもしれない。逆も然りだ。
私は解離性障害。記憶の改変は特技だろう。
リアルと、リアルに近いフェイクと
実際の記憶をなぞる夢と、実際の記憶に似た夢。
これらを巧妙にミックスされると、何が本当で真実で現実なのかと、ぼんやりと混乱する。自分の記憶を信用できないだけに、微妙なところを突かれると、揺さぶられる。
私の認識能力は、いよいよおかしい。
自分の現在地を正確に把握できないことが増えており、結果として夢に引っ張られてしまいがちだ。
何が真実で、何が虚偽なのか。
これは現実なのか。いまはいつで、私は何なのか。
池袋を歩きながら、あんな会話を交わしただろうか。
あの部屋にあの人は来て、あんな会話をしたんだっけか。
私って、結局あの人とどうなったんだっけ。
このベッドは、いつの私の部屋のベッドなのか。
ぼんやりとした混乱は、時には痛みを伴うが、時には甘く優しい。
夢が私を手放すまでは、だらだらと眠り続け、夢に耽る。
そんな日々を送っていたら、もう夏。
夏は嫌いです。
夏に突然いなくなる女は、嫌われて当然です。
百鬼夜行に遭った(夢か現か)
夢か現か、百鬼夜行に遭った。
自宅でお風呂上がり、暗い廊下を歩いていたら、ふと場所が変わり、百鬼夜行に遭ったのだ。
見たことのあるような暗い田舎道
私は尻餅付いて座った状態で、前を妖怪達がつらつらと歩いていく
列から抜け、一人の人型妖怪がこちらに来た
「二つ貰っていくぞ、妖怪もどきの人間」
顔を近づけてこう言った後、ニタりと笑ったその顔は、私の大嫌いな人間の顔を全て重ねて出来上がったものに見えた
その顔にゾッとし、寒気と吐き気を覚えて我に帰った。
その後、何か言っていた気がするが覚えていない。
私は風呂上がりの格好で、自宅の廊下に倒れていた。30分位が経過していた。
私は倒れて夢を見ていたのだろう。
椎名林檎の聴きすぎ、京極夏彦や横溝正史の読みすぎで、こんな夢を見たのだ。
暗い廊下の先に、百鬼夜行の提灯の灯りが見えた、気がした。
リアルな声で「二つ貰ったぞ、妖怪もどき」と頭に響いた。
夢か現か、幻視か幻聴か。
もう祭りのあと、全部持っていけばいい。